移住者メッセージ

通信技術系から新たなフィールドへ 「ときシードル」の開発で地域を盛り上げる

   

2021年4月26日:更新

移住者メッセージ

プロフィール

   
土岐彰寿(ときあきなが)さん/ 1981年、五所川原市出身・在住。「トキあっぷる社」代表。日本工業大学卒業後、首都圏の情報通信建設会社に入社。退職後、中国に渡りプロバイダサービスを提供する会社などでソフトウェア開発に携わる。2008年、日本に戻り、中国に本社のある大手通信技術系の会社に12年間勤務。2019年にUターンし就農。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」が放送されるのに合わせ、五所川原市発祥のりんご「トキ」を使った「ときシードル」を開発するなど、地域の魅力を発信するさまざまな活動を展開中。

五所川原市内で明治時代から続く、りんご農家の息子として生まれた土岐彰寿さん。日本や中国で大手通信技術系の仕事に従事した後、2019年にUターンし就農しました。五所川原生まれの黄色いりんご「トキ」を使った「ときシードル」を開発するなど、独自の視点で地域のポテンシャルを探り、広く発信しています。

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日本や中国を舞台に、リーディングカンパニーの技術者として活躍

「子どもの頃から親に『農家は食べていくのが大変だから、サラリーマンになりなさい』と、教えられてきたんですよ。なので、首都圏の大学に進学したのを機に、そのまま向こうに永住するつもりでした」と、笑う土岐さん。工業大学で電子工学を学んでいた土岐さんは、第二外国語で選択した中国語に惹かれ始めます。

「中国語の音の響きがメロディーのように心地良く感じて。それで、中国人や台湾人留学生と一緒に『国際文化交流会』というサークルを立ち上げて、一緒にご飯を作ったり卓球をしたり交流していたんです。その時に、中国語検定2級を取得したので、将来は中国で働いてみたいと思うようになりました」。

 大学卒業後は、首都圏の情報通信建設会社に入社し3年半ほど勤務。しかし、中国で働いてみたいという気持ちが募り退社。中国に渡り、プロバイダサービスを提供する会社や電気通信事業を展開する会社に技術職として勤務しました。2008年に日本に戻り、中国に本社のある大手通信技術系の会社に勤務。2019年9月まで12年間、技術リーダーやプロジェクトマネージャーとして活躍していました。


NHK大河ドラマ「麒麟がくる」にちなんで商品企画 

 土岐さんがUターンするきっかけのひとつに、戦国武将・明智光秀を主人公とするNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の制作発表がありました。
「私が子どもの頃から、明智光秀は土岐一族と関係があり、うちは家紋も同じだと聞かされていたんです。あらためて家系図を調べてみると、うちの先祖は初代沼田藩主につながる土岐明智氏であることが判明。江戸時代に開拓のため五所川原に来て、明治時代からこの地でりんご栽培を始めたようです」。
 2年後にドラマ放送が始まるのに合わせて、何か企画したいと考えていた土岐さん。ある日、所属しているワインクラブの返礼品の中に入っていたシードルが目に留まりました。「飲んでみると、すごくおいしくて。あれ、待てよ。そういえば、うちはりんご農家だよな。しかもトキがあるじゃないか!と。そこでパッとアイディアがひらめいて、明智光秀に関連したシードルをつくろうと思ったんです」。
 黄色いりんご「トキ」は、土岐さんの親族にあたる五所川原市の故・土岐傳四郎さんが、「ふじ」と「王林」を掛け合わせて育成したりんご。土岐一族の末裔の手によって誕生し、その名も「トキ」と命名されたりんごは、今回の企画のストーリーにもぴったりでした。

父の病気でりんご農園が存続の危機に

 2019年、東京ビックサイトで開催された「東京シードルコレクション2019」(一般社団法人日本シードルマスター協会主催)で、弘前市でシードルづくりを行うGARUTSUと出会ったことで計画が具体化してきます。

 一方、時を前後して、土岐さんのもとに実家から、父親が病気になり農業を続けるのが困難になってきたという知らせが入ります。 「トキでシードルをつくるならば、拠点を青森に置いた方がいい。だったら地元に戻って農業をやってみようか...と思いました。また、ちょうどその頃、米中問題により会社も大きな転換期を迎えていました。ですので、いろいろなタイミングが合致し、帰郷に至ったという感じです」。


「ときシードル」の評判は上々。台湾でも即完売!

 2019年10月にUターンし就農した土岐さん。同年11月には、GARUTSUが運営する新しい醸造所「白神ワイナリー」が完成し、「ときシードル」のプロジェクトが本格的に始まりました。そうして、2020年5月、ついにシードルが完成。シードルの色はりんごの蜜のような黄金色で、ラベルには光秀が詠んだ句と土岐氏の桔梗紋があしらわれています。

 日本、アメリカ、イギリス、ヨーロッパなどで配布されるシードル専門情報誌「in Cider Japan(インサイダージャパン)」の表紙に取り上げられたことで、シードル業界でも話題になり、評判も上々。また、台湾に輸出したところ即完売し、春に再輸出するほど好評だったといいます。 「初めての試みでしたが、青森県やトキのPRにもつながってうれしかったですね」。


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 現在、土岐さんは、神奈川県茅ケ崎と東京都浅草橋のブリュワリーで最もバランスが良いとされてるサンふじを使用したビールの醸造も行っており、将来は地元での醸造も検討しているといいます。また、トキを使ったジュースも製造するなど、さまざまな商品企画を行っています。



青森のポテンシャルは無限大

 土岐さんに案内され、五所川原市神山地区にある「土岐りんご園」を訪ねました。訪ねたのは1月中旬。2月にはりんご農家にとって大切な剪定作業が始まります。
「Uターン後、りんごの栽培技術も何もわからない自分のために、手取り足取り教えてくれた友人・知人に本当に助けられました」と、土岐さん。一方、「ときシードル」開発を機に若手農業者から、商品開発やクラウドファンディングに関する相談などが寄せられることも多くなったといいます。土岐さんの挑戦は、地域の若手農業者たちを刺激し、奮起材料にもつながっているようです。

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「五所川原には、果肉や花、枝までもが赤い『赤~いりんご』など、世界的に珍しいものもあり、まだまだ商品開発の伸びしろがあると思います。首都圏の人に、私がりんご農家の息子だと話すと、すごくうらやましがられ、『りんごが樹になっているところを見てみたい』、『りんごの薪を工芸品に使いたいから譲って』、『りんごの枝を分けてほしい』と、みんな興味津々。私たちにとっては見慣れたりんご園の光景や、当たり前すぎて気にも留めないものでも、首都圏の人にとってはすごく価値の高いものなんですね。りんごそのものの魅力ももちろんですが、観光やアクティビティなど、りんごのコンテンツは実に豊富でポテンシャルがすごい!Uターン者の視点を生かし、農業を軸に首都圏と青森をつなぎ、地域を盛り上げる役割を果たしていけたらと思っています」。

 土岐さんは、「若い人が県外に出ていくのは構わないと思う。むしろ、国内外でたくさんの経験を積んで帰ってくればいい。そして、帰ってきた時にその経験を青森で生かし、面白いことができたら青森はもっと盛り上がるのでは」と語ります。グローバルな視点ときらりと光るアイディア、フットワークの軽さでさまざまなことに挑戦中です。

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トキあっぷる社」webサイト https://shop.toki-apple.com/

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