移住者メッセージ

十和田を盛り上げたい。そのために、人の交流を増やしたい。夢を持って、地元で家業を継ぐ

   

2023年7月28日:更新

移住者メッセージ

プロフィール

   

下山 沙織(しもやま さおり)さん/1988年十和田市生まれ、十和田市在住。高校卒業後、大阪府の大学に進学。工学域を専攻し、大学院まで進む。卒業後、首都圏の大手エンジニアリング会社に勤務。2018年に退社し、夫とともにUターン。実家が営む「十和田シティホテル」に入社し、ホテルの業務に従事するかたわら、敷地内の空き店舗の改装も手がけ、2022年、カフェやイベントスペースを備えたコワーキングスペース「サンバスタンド」をオープン。弟、妹と共同で運営し、さまざまなイベントを通して地域を盛り上げる。

 
 下山沙織さんは旅館を営む両親のもとに生まれ、両親が働く姿を間近で見て育ちました。旅館がホテルにリニューアルした頃に、大学に進学するため家を離れましたが、長女であり弟・妹と年が離れていたことから、「自分がホテルを継ぐ」ということを次第に意識するようになったといいます。ターニングポイントは結婚。「今後の生活のことを考えて、両親が元気なうちに」と、神奈川県出身の夫の賛同を得てUターンしました。それから約5年。ホテルの仕事を覚え、母になり、新たな事業も始めるなど、充実した暮らしを送っています。

好きな仕事に区切りをつけて生まれ故郷へ。家族と豊かに暮らす選択

下山さんは小さい頃からものづくりが好きで、大学では機械工学を学び、美術部の部長も務めていました。卒業後に選んだ就職先も、ものづくりの会社です。

「やりたいことが詰まっていた職場でした。ものをつくるということはもちろん、グローバルな会社で社内に外国の方も多くて。いろんな国の方と交流しながら働くのも楽しかった」と話します。

 

 そんな下山さんの気持ちに変化が表れたのは、結婚を考えるようになったときのこと。両親が一生懸命に営んできたホテルをなくしたくない。継ぐのであれば、両親が元気なうちにさまざまなことを教えてもらいたい。潜在的に持っていたそんな想いが、結婚という人生の節目を迎えて表面化したのです。

「育児環境など、これからの生活も考えてのことでした。確かに前職は楽しかったですけど、ホテルの仕事も新たに取り組むことですから、楽しみで。国際交流の経験も生かせると思いましたし、一種のチャレンジではないですけど、心機一転、気持ちを切り替えましたね」。そうして29歳で十和田にUターンしました。

弟妹の帰郷をきっかけに、新たな事業を展開

 Uターンしてからしばらくは、ホテルの業務に追われました。フロントに接客、厨房、清掃。「ホテルの仕事は人がいないと回らない。人手が足りないときもあるから、経営者はオールラウンダーでなければならない」という父の教えのもと、ありとあらゆる業務を学びながらこなしたといいます。そんな折に、弟と妹のUターン話も浮上することに。

 「新型コロナウイルスの感染拡大で、県外で働いていた弟と妹が帰郷を考え始めました。帰ってくるのであれば、働き先となる受け皿が必要です。そこで、隣接する空き店舗で何かできないかと考えを巡らせていたときに、事業再構築補助金(中小企業庁)の募集案内を目にして。新しいことをやってみようと思ったんです」。

 

 コロナ禍にありホテルの事業も苦境に立たされていた中で、探り始めた新たな可能性。宿泊客から、仕事ができる場所やオンライン会議ができる場所を望む声が多くあったこともあり、コワーキングスペースの開設をベースに計画を練りました。

「コワーキングスペースの普及が進んでいた和歌山へ視察にも行きました。そこで、人が集まるコワーキングスペースは、飲食がすぐ近くにあるところ、そして入場料や会費をとっていないところだということを知りました。私たちが新しく作るコワーキングスペースも、地元の人同士だけでなく、さまざまな地域から来る人と交流できるような、人と人が繋がる「まちの縁側」にしたい。田舎にあるコワーキングスペースだから、入りやすくて、会話もしやすくて、ふらっと立ち寄りたくなるような。さまざまな方々のアドバイスから、そのようなイメージを作っていきました」。

 

 帰郷前の弟や妹とも意見交換を重ねました。

「弟は実業団の卓球選手であり、妹は銀座の料亭で修行をしていました。2人の得意分野ややりたいことも取り入れて、特徴も出せるようにと」。

 こうして20227月、十和田市「産馬通り」のガソリンスタンド跡地に「サンバスタンド」が誕生しました。名前の「スタンド」は、「スタンド・バイ・ミー」から「君に寄り添う」という意味も掛け合わせて考えたとのこと。カフェが融合したようなコワーキングスペースに、卓球台を常設したイベントスペース「スマッシュルーム」を併設。リモートワークをしながら楽しく過ごせる場所にしたいという下山さんの想いも叶う、ユニークなコワーキングスペースです。

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 メニュー開発を含むカフェの運営は妹が担当。コワーキングの利用はワンドリンクオーダー制なので、需要の高いコーヒーは注文を受けてから豆を挽くなど気をつかっているといいます。

「それに、妹が料亭で学んできたかき氷が思った以上に反響があって。とても嬉しいですね」と、下山さんは微笑みます。

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 弟はスマッシュルームで卓球教室を開催。そのため、部屋の明るさや壁紙、天井の高さなどは卓球に適した仕様になっているそうです。

 

 コワーキング利用の固定客も生まれ、近所の子どもたちが卓球を楽しみ、近隣の飲食店や商店、団体からはイベントの打診があるなど、オープンから1年たたないうちから賑わいが創出されました。これは、下山さんにとってとても嬉しいこと。

「ことの起こりは弟妹の帰郷でしたが、十和田が盛り上がって欲しいという想いもずっと持っていたんです」と、微笑みます。

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十和田を盛り上げるため、これからも何かを作っていきたい

 

 サンバスタンドの構想からオープンまでの間に出産も経験し、母になった下山さん。今は仕事に子育てにと、多忙な日々を過ごしています。

 

 「そういう状況ですので、実はまだサンバスタンドに本腰を入れて関われていないんです。でもゆくゆくは、私もそこを拠点に、十和田を盛り上げるための何かができたらいいなと思っています。例えば、若い人を集めるための受け皿はもっと増やしたいですね。人が集まったら、そこからムーブメントが起きると思うので、それをプロデュースするというのが、今の大きな目標です」。

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