移住者メッセージ

聖地巡礼をきっかけに弘前へ移住 作品の世界の中で暮らす日々

   

2025年4月 2日:更新

プロフィール

   

 たやなおきさん/1990年生まれ、大阪府出身。東京でのサラリーマン時代に漫画「ふらいんぐうぃっち(講談社刊・「別冊少年マガジン」にて連載中)」に出会い、ストーリーや世界観に魅力を感じて追いかけるようになる。作品をきっかけに舞台である弘前を訪れ、2021年に東京から弘前へ移住した。現在は派遣会社に勤めながら、作品の応援団体『魔女協会弘前支部』を運営し、ファン同士で交流できるイベントなどを企画している。

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「ふらいんぐうぃっち」をきっかけに、弘前を知る

 大阪で生まれ、大学卒業までを関西で過ごしたたやさん。中学生の頃から漫画が好きで色々な作品を読んでおり、大学生になってアニメもよく見るようになりました。大学卒業後は印刷会社に就職し、東京で暮らし始めました。「ふらいんぐうぃっち」に出会ったのは、働き始めて一年目の頃でした。


 「ほのぼのした雰囲気の中で魔女や魔法が登場するストーリーに惹かれ、作品を追いかけるようになりました。作中に登場する町の描写を見て、弘前という場所があることを知りました。」


 たやさんが「ふらいんぐうぃっち」を好きになった理由はいくつかあるそう。その中でも大きな魅力は、「フィクションとノンフィクションが絶妙に混ざり合いながら展開していく物語にある」といいます。


 「作中では弘前をはじめ、青森県内の実在する風景や建物、祭りや文化などが丁寧に描写されています。その中で魔女や不思議な生物たちが、町の中に溶け込みながらごく自然に登場するのです。弘前に行けば本当に魔女が飛んでいるのかも、という気持ちになり、作品を追いかけると共に弘前にも興味が湧いてきました。」

初めての弘前へ、聖地巡礼の一人旅

 東京で暮らしながら「ふらいんぐうぃっち」を通して弘前を知ったたやさんは、2015年の秋に初めて弘前を訪れます。過去にも漫画やアニメ作品の舞台となった町を訪れる「聖地巡礼」の経験はありましたが、住んでいる場所の近くを訪れることがほとんどでした。一人旅で遠方へ聖地巡礼したのは、弘前が初めてだったそう。


 「弘前を初めて訪れたときは、とてもワクワクしたことを覚えています。作中に登場する町の風景や建物がほぼそのまま現実にあって、作中の世界に自分が入り込んだような気持ちでした。」


 たやさんは、作中で登場する建物のモデルとされている大正浪漫喫茶室や、単行本の表紙で描かれた巌鬼山神社など、作品にゆかりのある場所を巡りました。この度をきっかけに、作品だけではなく弘前という場所に惹かれていき、その後も頻繁に弘前を訪れるようになります。

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【巌鬼山神社(弘前市十腰内)】

作品を通して、人との繋がりも増えていく

 その後、2016年4月にアニメ化されたことをきっかけに、街中のポスター掲示やコラボイベントの開催など、市内で「ふらいんぐうぃっち」を目にする機会が増えていきました。たやさんは弘前を定期的に訪れながら、SNSで「ふらいんぐうぃっち」に関する情報を発信することで、弘前に住むファンの人々との繋がりを徐々に増やしていきます。


 「SNSで弘前へ行く予定などを投稿すると現地の人たちが会いたいと連絡をくれて、車で案内してくれるようになっていきました。青森の人は親切であたたかいと感じましたね。」


 作品をきっかけに、地元の人々との交流を深めていき、弘前を訪れる機会もどんどん増えていったたやさん。多い時には、年に5,6回は弘前を訪れていたそうです。2018年には地元で出会った人たちに声をかけ、応援団体『魔女協会弘前支部』を発足。ファン同士の交流会を開催したり、弘前の雪灯篭まつりなどのイベントに参加したりなど、作品を通して交流できるような活動を始めました。

自分らしくいられる場所に住むことを決意

 「ふらいんぐうぃっち」を通して、弘前との繋がりが深くなっていったたやさん。弘前で出会った人たちから「もう移住した方がいいよ」と冗談交じりで言われることもあったそう。たやさん自身もやがて、弘前への移住を検討し始めるようになりました。


 しかし、その頃に新型コロナウイルスの感染が拡大し、東京から自由に移動することができなくなります。弘前の町へ自由に行くことができなかった期間は、たやさんにとってこれからの自身の人生について向き合うターニングポイントとなりました。


 「当時(2020年頃)はちょうど30歳になった頃で、このまま東京に住み続けるべきか、自分の中で揺れている時期でした。弘前に行けない経験をしたことで、自分が好きな町で暮らしながら自分のことをしたい、という想いが高まりました。」


 そして2021年の4月、たやさんは弘前への移住を実現しました。当初は雪が降る冬の生活に不安を感じていましたが、現地の友人たちのアドバイスもあり、スムーズに暮らしに慣れることができたそう。


 「弘前には何度も通っていたので、大きな問題はなく移住することができました。実際に暮らすことで地元のお店やイベントにもどんどん行けるようになり、人との繋がりもますます増えていきました。」

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【地元のマラソン大会に初出場した際の写真】

ファン活動から生まれる繋がりを増やしたい

 たやさんは弘前に移住してからも応援団体『魔女協会弘前支部』の活動を続けており、県内外のファンや希望者が参加できるイベントなどを開催しています。今後も、定期的に人が集えるような企画をしていきたいと語ります。


 「『ふらいんぐうぃっち』という作品が、自分の人生に多くの影響を与えてくれました。これからも弘前に住み続けて、作品のファン同士が繋がる活動や、地域が盛り上がるような機会を作っていきたいですね。」


 最近では作品の舞台への「聖地移住」がメディアで取り上げられることもあり、たやさん自身も何度か取材を受けるなど注目を集めています。アニメや漫画をきっかけに地域を訪れ、人との出会いに繋がるという新しい動きが、これからも広がっていきそうです。

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