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関係人口レポート

離れた場所からイノベーションを スキルを活かして地域の力に

   

2021年3月29日:更新

   

弘南鉄道は、弘前市を中心に、弘前駅と黒石駅を結ぶ弘南線(16. 8km)、大鰐駅と中央弘前駅を結ぶ大鰐線(13.9km)の2つのローカル線を有する鉄道会社です。時代の流れによる影響を受け、難しい経営状況が続く中、社員はもちろん、存続を願う有志が力を合わせて列車を盛り上げています。そんな弘南鉄道の救世主となるべく、マーケティングのノウハウを持つ関係人口の2人がプロジェクトに参加。それぞれの想いや取り組みを伺いました。


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水谷 悦久(みずたに えつひさ)さん/
愛知県出身。大手旅行会社に勤め、法人営業を担当している。弘南鉄道は、仕事でよく利用していた時期があり、愛着があるため力になりたいと、今回のプロジェクトに参加。ビジネススクールのグロービス経営大学院卒業生。

スキルやノウハウを、地域企業の事業活性に活かしたい

 大手旅行会社に勤める水谷さん。旅行という前向きな体験価値を提供する現在の仕事にやりがいを感じつつ、それで満足することなく、これまでに身につけたスキルやノウハウをほかにも活かす場所はないかと、常にアンテナを張り巡らせています。そんな中で出会ったのが、今回のプロジェクト。経営再建や地域活性の分野に興味があったこと、そして弘南鉄道のある青森県が、過去に仕事でよく通っていた場所であったことから、アンテナが立ち、応募したそう。
 水谷さんが積み上げてきたビジネススキルは、大きく二つあります。一つは営業力。これまでのキャリアで、成果を残してきたという自負があるといいます。もう一つはマーケティング。ビジネススクールで学んだ知識をベースにこれまでのキャリアで活かしてきたそう。
 関係人口として、自身の強みを活かしながら地域の役に立てるこのプロジェクトは、まさに水谷さんにぴったりでした。

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弘前市、平川市、田舎館村、黒石市の3市1村を35分でつなぐ弘南線

机上の空論だからこそ、生まれる発想も

 プロジェクトが始まってから数ヶ月。現在東京に住む水谷さんは、コロナ禍のためほぼリモートで企画に取り組んでいます。「本当であれば、実際に現地に入って、地域の人と触れ合って考えたい。でないと、机上の空論になってしまいますから。ですが逆に、机上の空論だからこそ違った発想ができることもあるかもしれません。今はそう思いながら、資料を読み込み、ひたすら考えています」と、話します。
 そのような状況下ですが、弘南鉄道の社員や、ともにプロジェクトを担う常家真美さんと、オンラインでの会議は頻繁にしているそう。ディスカッションすることで、水谷さんが漠然と頭に浮かべていたことが形になっていきます。「持続的な収益改善ができるような、その一歩となる仕組みを作りたい。常家さんとも共有させてもらって、新しいブランドをどう作ろうということを考えています。何より僕らが楽しんで取り組んでいきたいと思っています。楽しく行動しているところには、ヒトも、モノも、カネも、情報も集まってくると信じています」。
 現地入りできるときを待ちながら、日々アイデアを蓄えています。

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週に1回のペースで行われているオンライン会議。青森と東京とイギリスをつないでいます。

自分の成長具合を見極めて、さらなるステップアップを

「仕事への価値観が私はけっこう明確で、一人でも多くの人に喜んでいただけるような、希望を持ってもらえるような仕事をしたいと思っています」と、水谷さん。プロジェクトを通して自分を高め、今後のキャリアを選んでいきたいと考えています。「それに、地域振興、地域再生の分野に関心があります。今回縁があった青森のことも、ずっと応援していきたいですね」。
 水谷さんの挑戦は、始まったばかりです。




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常家 真美(じょうか まみ)さん/
弘前市出身。高校卒業後県外へ。大学卒業後、国内大手自動車メーカーに勤務。夫の転勤のため現在は退職し、イギリスに住む。

オンラインで、遠くからでも関われる

 現在イギリスに住む常家さん。家族の帯同で海外に渡ったため、また今の世の中も影響して、仕事ができず自宅で過ごす日々が1年ほど続いています。そんな中、オンラインで積極的な活動を展開し、日本の地方の企業のサポートなど、いくつかの案件に関わるようになりました。関係人口のプロジェクトも、その一つです。
「この休んでいる時間を使って、地元と関われる仕事なりプロジェクトなりができたらおもしろいんじゃないかと思いました」。
 常家さんは、イギリスに渡る前、自動車メーカーに勤めていました。この業種を選んだきっかけは、弘前の車社会の中で育ったバックグラウンドにあります。「常に身近にあるものを作りたい」と、思ったのだそうです。キャリアのバックグラウンドの一つに、ふるさとが影響している。そんな常家さんですから、小さい頃から馴染みある弘南鉄道のプロジェクトに惹かれたことは、すごく自然なことでした。

⑥.JPG岩木山、津軽平野、弘南鉄道。ふるさとの風景。

弘南鉄道がいつまでも残ってほしい

「私は地元民の目線として、とにかく廃線となってほしくないというのが一番にあります」と、常家さん。「感情的な面ではありますが、そういう想いのような部分が重要な原動力だと思っています」。
 さらに、外からの目線でも地元を見ることができるのが、常家さんの強みです。「一度外に出て客観的に思ったのは、弘南鉄道に限らず、青森の企業はほかの都市に比べて発信力が弱いのではないかということです。かといって、他県と同じような発信の仕方をしても、埋もれてしまうかもしれません」。
 青森なりの発信の仕方、どう社会にメッセージを残せるかを、会社に寄り添い一緒に考えています。また、ブランディングについてもアイデアが浮かんでいるそう。
「水谷さんとディスカッションの最中ですが、新しいブランドを作るなりして、鉄道会社という枠組みを超えて、人間くささを感じられるようなブランディングをしてみてもおもしろいんじゃないかと思っています」。
 いい意味でさびれた、今の言葉で言うと「エモい」ところが魅力の弘南鉄道。昭和を残したような風景は、特にインフラの整った都市では、なかなか見ることができません。「あの風景は、いつまでも残っていてほしいですね」。

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「エモい」中央弘前駅

"弘前出身"というバックグラウンドで

 今回のプロジェクトのように、やりたいと思ったことに向けて経営陣と直接一丸になって進められるところにも、小規模のチームならではの魅力を感じているといいます。「今回は、そういう意味でもすごくいい機会になっています」と、話します。
 また、これまでの業務経験の中でマーケティングやプロモーションに携わってきましたが、今後さらに深く関わっていきたいそうで。ですから、このプロジェクトは、常家さんにとって経験、実績を積む場にもなることでしょう。
 "弘前出身"という、常家さんが大切にしているバックグラウンドに、関係人口という立場で臨むプロジェクト。遠くにいても、今日も地元に寄り添います。

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