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関係人口レポート

【五十嵐孝直さん(田子町)】にんにくの町で複業に挑戦 SNSでつながっていく関係人口

   

2024年4月18日:更新

   

 青森県の最南端に位置する田子町は、にんにくの町として知られています。面積の約80%を山林が占め、人口は5000人ほどのこの町で、新たな事業を始めるために五十嵐さんは移住してきました。地域おこし協力隊としても活躍し、町の関係人口を増やしているその活動について伺いました。

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>プロフィール

五十嵐 孝直(いがらし たかなお)さん/

千葉県出身。「あおいもりトレーディング」代表。田子町地域おこし協力隊。大学卒業後、外資系商社に入社し6年間シンガポールに駐在する。2019年に退社し、田子町に移住。地域おこし協力隊として活動しながら、「あおいもりトレーディング」を立ち上げ、加工品販売や空き家事業、観光業を行う。

田子町のにんにくと、自分の力で事業をしたい

 

 前職では、外資系商社のシンガポール支店で代表を勤め、東京では高級車の販売をしていたという五十嵐さん。華々しいキャリアの持ち主ですが、帰国後「会社のネームブランドや肩書きにとらわれずに、自分の力で事業をしたい」という理由で退社。新事業へ向けて考えを巡らせていたときに見つけたのが、田子町でした。

「バクテーというシンガポール料理で事業を興したかったんです。バクテーは日本でいうラーメンみたいなもので、シンガポールではポピュラーな料理です。私も大好きなので、日本でも広めたくて。バクテーは、にんにくと豚のスペアリブを煮込んで作るんですが、その食材を生産している町をネットで探していたときに、田子町を見つけました」。

 当時、田子町のことは知りませんでしたが、田子産にんにくに商材としての可能性を感じたそう。そこで、地域おこし協力隊の制度を利用し、移住することにしました。

 「事業は海外展開も考えていました。にんにくは長期保存がきいて輸出しやすい。いろいろな料理に使えるし、いい商材だなと漠然と思っていましたね」。

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シンガポールのスープ料理バクテー。

 

 移住後、すぐにコロナ禍になってしまいましたが、五十嵐さんはバクテーを自宅で作れるスパイスキットを開発。個人事業として「あおいもりトレーディング」を立ち上げ、ネット販売をスタートします。また、田子産のにんにくをシンガポールに輸出し、現地のスーパーマーケットに置いてもらうなど、田子のにんにくを世界へ広める活動もスタートさせました。

 

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シンガポールのマーケットで田子町の商品を店頭販売する五十嵐さん。

 「地元の人から見たら、異質なことをやっていると思います。今までこういうキットをつくったり、にんにくを輸出する人もいなかったと思うので。移住者らしく外目線でやっていますが、少しずつ町にも馴染んできている気はします」。

 

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バクテーのキット「旅するTRAVEL SOUPTAKKO BAK KUT TEH SOUP』」(540円)。

空き家をきれいにしたら、使う人が自然と現れる

 一方で、もともと地域課題にも関心があった五十嵐さん。いざ移住してみたら、町の元気がなくなっていると感じていたそうです。「人口は年々減っているし、店もなくなっている・・・。自分にできることを何かしたいと思いました」。

 

 そこで、五十嵐さんは町の中心部にあるかつて呉服屋だった空き店舗を買い取り、改装。「きれいにしたら、使う人が出てくるんじゃないか」と予想していたところ、町に住む20代のパーソナルトレーナーが、夢だったトレーニングジムを開くことになりました。人口5000人の町にトレーニングジムがあるとは意外ですが、町内だけでなく近隣の町からもお客が来ているそう。町の光景が変わりつつあります。

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田子町にあるスポーツジム「Conditioning Gym FORCE」。

 

コンテンツをつなげて、より長く田子町で楽しんでもらう

 

 五十嵐さんは、地元の農家や企業と組んで、さまざまな観光イベントを実施する観光業も営んでいます。関係者と話し合って内容を決め、「あおいもりトレーディング」のウェブサイトなどで情報発信や集客を行ってきました。

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RAB青森放送 RABニュースレーダー」の中継で、田子町観光協会が主催する「フワフワの雪の上を歩いてみよう!スノーシュー体験会!」の宣伝をする五十嵐さん(手前)。

 

 「実は、青森にある市町村のなかで、田子町は最も観光客の数が少ないというデータがあるんです。だからこそ、ここで観光業に取り組んだらどうなるか、実験的な気持ちもあります」。

 今は、田子町の観光を大きくする構想を練っているといいます。

 「田子町には楽しめるコンテンツがたくさんありますが、旅に必要なコンテンツは別々に行われている状況です。その個々のコンテンツを結びつけて大きくすれば、訪れた人により長く町に滞在してもらえます。例えば、今までにんにくの収穫体験だけして帰っていた人でも、夜に田子牛を食べて、町の宿泊所に泊まることを結びつけると、翌日さらになにか別の体験をしたくなる人もいると思います。それが、お客さんの潜在的な田子町への欲求だと思うんです」。

 一つひとつのコンテンツは小さくても、まとめたら大きくなる。まとめ役ができるのは、町内のさまざまな観光イベントに関わってきた五十嵐さんだからこそ。そういった理由から、宿泊ツアーの提供ができる地域限定旅行業の登録をしたといいます。さらに「英語での情報発信もしてみたい」とアイディアはつきません。

 

SNSで応援してくれる、ふるさとを離れた元町民

 五十嵐さんは、田子町での活動を個人や協力隊のSNSで発信しています。最近、そこから意外な関係人口に励まされたそう。

 「田子町出身だという女性が、インスタグラムの私のアカウントに長いコメントをくれたんです。『自分はわけあって町を出てしまったけど、協力隊の方々が頑張っているのを見て応援しています。いい町にしてください』って。こういう元町民の方も、関係人口といえますよね。私は自ら望んで移住できたけど、ふるさとに戻りたくても戻れない人もいる。そういう人たちの思いを受け止めて、彼らのぶんまで頑張ることが、私のような移住者の使命じゃないかと思うようになりました」。

 ほかにも、東京でイベントをするときに来てくれたり、五十嵐さんがSNSで発信する情報をシェアしてくれる元町民もいるそうです。「地道でも、個別のつながりを大事にしていきたい」という五十嵐さん。すぐには田子町に戻れない人でも、SNSを介してつながってほしい。そんな風に、遠くにいる関係人口を歓迎しています。

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