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関係人口レポート

【株式会社ビーコーズ(十和田市)】「やりたいこと」を否定されない場を十和田に。相互に関わり合える関係人口

   

2024年4月18日:更新

   

 青森県南部の内陸に位置し、十和田湖や奥入瀬渓流などの景勝地を擁する十和田市。市内の中心エリアには西沢立衛設計の「十和田市現代美術館」をはじめ、安藤忠雄、隈研吾、藤本壮介と、日本を代表する建築家が手がけた施設が点在し、アートや建築のまちとしても知られています。そんな中心エリアに拠点を構える株式会社ビーコーズは、ウェブサイト制作やウェブアプリケーション開発などを行う制作会社。コミュニティカフェやイベントスペースも運営し、市内だけでなく周辺地域や移住者との関係人口づくりを行っています。地方のウェブ制作会社が考える、関係人口との関わりしろとは?

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▼プロフィール

村岡 将利さん(むらおか しょうり)さん/

 十和田市出身。株式会社ビーコーズ 代表取締役。青森県立十和田工業高校卒業後、東京電機大に進学し情報通信工学を学ぶ。卒業後はベンチャー企業のシステムエンジニアやウェブ制作会社のプログラマーを経て個人事業主として独立。20164月に株式会社ビーコーズを設立、6月に十和田市へUターンした。

 

Uターン移住し、地元に感じていた課題から会社を設立

 

 リモートワーカーの移住を促進する「お試しとわだ暮らし」や、商店街コワーキングプロジェクト「横から商店街」など、地域の活性化や移住に関するプロジェクトを手掛けている、株式会社ビーコーズ。代表の村岡将利さん自身も、Uターン移住の経験者です。

 「東京にいた頃は青森県人会や十和田会によく参加していたのですが、みなさん親身になって話を聞いてくれるので、そうしたコミュニティはありがたい存在でした。Uターンの期限は決めていなかったのですが、デーリー東北新聞社から移住についての取材を受けて、はずみで『来年Uターンします』って言っちゃったんですよね(笑)。しかも、それが一面に載ったんです。これは帰らないわけにいかなくなってしまって」。

 こうして2016年、29歳のときにUターン。

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ビーコーズのロゴが描かれた看板。

 

 「帰ってくるなら、課題感をもって取り組みたいと思い、地元に対して感じていた課題を整理しました。十和田には、ウェブ制作会社があまりないから、IT活用が遅れています。仕事としてIT系が選択できないし、教える人がいないから勉強できない。とはいえ、こうした課題を解決しようとしても一人でやれることは限られているので、仲間を集める必要があったんです」。

 そこで、会社を設立してメンバーを徐々に増やしていきました。現在の社員数は5人。十和田市だけでなく、東北町や八戸市などの周辺地域の出身者もいます。

 

 

「やりたいこと」を否定されない空間を、十和田につくる

 

 202011月、ビーコーズに初めて、ウェブ制作の技術職ではないメンバーが入社しました。地元・十和田出身の佐藤佑志さんです。

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▼プロフィール

佐藤 佑志(さとう ゆうし)さん/

十和田市出身。株式会社ビーコーズ コミュニティマネージャー。コミュニティスペース「second.」店主、焼きそば職人。青森県立十和田工業高校卒業後、六ヶ所村で消防設備の設計や施工管理などを行う。休職して世界一周したのちに退職し、2020年、株式会社ビーコーズへ入社。

 

 それまではウェブ制作がメインだったビーコーズ。スペース活用やイベントの開催については「遊び感覚が抜けなかった」そうですが、佐藤さんが入社したことが「地域の課題へアプローチする覚悟ができたきっかけになった」と、村岡さんは話します。

 「自社で2018年からコミュニティカフェ『second.』、イベントスペース&ワークスペース『third.』を運営しているのですが、これまでの体制では月一回のイベント開催が限界でした。もっと交流イベントの機会を増やしたいし、空き店舗の活用シーンを増やしていきたいと考えていたところ、イベントに来てくれた佑志くんと知り合いました。ウェブ制作の未経験者が入社したことで、その領域でもやっていく覚悟ができたんです」。

 一方、もともと海外にも興味があった佐藤さんですが、世界一周を経験したことが、あらためて十和田に目を向けるきっかけになったといいます。

 「以前は、自分がやりたいことがあっても周りに『そんなことできないよ』って否定されることが多くて嫌になり、日本を出ようとしていたんです(笑)。でも、いざクルーズ船で世界一周していたら、船内で青森のことを聞かれても答えられないことが多くて。地元のことをもっと知りたいなと思い、十和田に戻ることにしました。クルーズ船のなかで誰にも否定されない空気感が心地よかったので、十和田でもやりたいことを応援できるような空間をつくれないかなと考えるようになったんです」。

 前職のときに働きながら運営していた屋台で焼きそばを作るのが楽しかったこと、直接人を喜ばせることができた経験から、「"好きなことを仕事にする"ことにも挑戦したい」と考えるように。「second.」の新たな活用として、週3日焼きそばカフェとして営業しています。お客さんのなかには、旅行客や移住者も多いといいます。

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七戸町の製麺所に特注した太麺と、十和田産ガーリックポーク、ソースに隠し味として入れた十和田産りんごジュースなど、地産の素材を使用。

 

 「ここで交流したり、十和田のおすすめスポットを教えたりと、地域のつなぎ役を担っています。また、定期的に交流イベントも開催しているのですが、参加者のなかから、地域の人がゆるくつながれるような活動をはじめた方もいます。十和田に新たな活動が増えて嬉しいし、自分も頑張らなきゃという刺激になりますね」。

 関係人口や地域の人たちを広く受け入れることで、関わりしろが生まれる場所となっている「second.」。「ぜひ気軽に来てほしいです」と佐藤さん。

 

 

自分も別の地域の関係人口になれる

 

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 移住プロジェクトにイベントに店舗にと、さまざまなアプローチで関係人口との交流を増やしているビーコーズ。村岡さんは、十和田と関わりを持った人が、どういう体験をすれば喜んでくれるのかを常に考えています。

 「観光や食にフォーカスした体験なら旅行でもできるので、僕らが意識しているのは "この土地にいる人"にフォーカスすることです。さらに言えば、十和田市外の人との関係性も大切にしたい。もし十和田に住んだとしても、市内の人とだけ関わるわけではありませんから。極端な話をすれば、十和田への移住を考えていた人が、八戸に移住したっていい。僕らの役割は、県や市ではできないような領域をやることだと思うので」。

 佐藤さんは、十和田に人を招くだけでなく、十和田の関係人口になってくれた人の住む土地を訪れることも多いといいます。

 「関係人口として十和田に関わってくれる人が増えると、逆に僕らもその人のいる土地の関係人口になれるんですよね。だから、できるだけ遊びに行くようにしているんですよ。それがいい関係人口だと思っています」。

 十和田での関係人口は、相互に広がりを見せはじめています。

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